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その1.パッシブデザインは、深い心地よさを生み出すものだから。

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 心地いいということについてちょっとだけ深く考えてみる
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みなさんは「心地いい住まい」を手に入れようとしているはずですね。でも「心地いい」という言葉はなんだかフワフワしていて曖昧です。わかりそうでわからない言葉です。
そこで、私たちはこんなふうに考えることを提案します。

心地いい=ずっとそこに居たいと感じる状況

どうですか?たぶんほとんどの人が「それでよさそうだ」と思ってくれたはずです。

ではここで、「いつ、どこで、ずっとそこに居たいと感じたか?」ということを思い出したり、想像したりしてみてください。

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もし全国の人にアンケートを取ったら、きっとこんな意見が多数を占めると思います。

◎夏に高原の木陰にいて、さわやかな風がそよそよ吹いているとき
◎秋晴れで風がない日に、公園などの自然が多い場所にいるとき
◎初春の天気がよい日に、日差しが注いでいる部屋で寝転んでいるとき
◎布団の中(夏以外)

ここで重要なのは、「閉鎖されているが、人工照明が点いていて空調の効いた場所」というような意見があまり出そうにないことです。つまり、キーワードは「自然」です。人は自然な心地よさを求めるということでしょう。

でもよく考えるとそれは当たり前のことで、人間は圧倒的に「自然」の中で暮らしてきた歴史が長いということを示しているんだと思います。いくら照明機器や空調機器が発達してきたといっても、“自然の心地よさ”には到達していないということです。

だから、私たちと住まい手(建て主)が一緒になって目指していくべきなのは“自然の心地よさ”にできるだけ近づくような住まいです。

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 夏の心地いい住まい
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ではまず、夏という季節においての「心地いい住まい」について考えてみます。
たとえば買い物に行って、エアコンのよく効いた建物に入ると「わぁ、涼しくて気持ちいい」と感じます。外出先から帰ってきてエアコンをつけ、その冷風に当たったときも同じです。そう感じる人が大多数であるのは間違いありません。
でも、エアコンの効いた部屋にずっと長くいて「心地いい」と感じる人はかなり減ると思います。冷房病ほど深刻ではなくても、冷房の効いた部屋に長時間いることが苦手な人はかなりいるはずです。エヌテックのスタッフも“長時間冷房苦手派”が多数を占めます。

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だとすれば、エアコンを動かす時間を最小限にするような住まいというのを考えていくのが正解でしょう。それを目指せば、エアコンが嫌いな人でもうまく夏をしのげるような住まいが見えてくるはずです。


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そこでまず考えるべきは「暑さの元」です。そしてそれは太陽です。
太陽の光は何かに当たれば、そこで熱に変わります。屋根に当たった太陽の光はそこでおおきな熱を発生させ、その熱が屋根を伝わって家の中に入ってきます。また、窓ガラスを通過して床や壁に当たった太陽の光は、そこで熱を発生させます。つまり夏は、天井、床、壁がパネルヒーターになっているということです。想像したくないイメージですが、これが実際なのです。これを何とかしなければ、心地いい夏の住まいに近づくことはできません。

次は風です。風が身体に当たると涼しく感じます。ただ、生暖かい風であれば少々強い風が当たっても涼しくは感じません。だから、いかに涼しい風を家の中に取り込んで、それを身体に当てるかがポイントになります。
とくにこの風は、湿度が高いときに感じる暑さを大きく軽減させるということも重要です。自然の素材をたくさん使って湿気を少し吸い込んでもらい(除湿してもらい)、そこに風を取り込むという順番です。

実はもうひとつ、夏における風の重要な役割があります。それは「家の中の熱を外に出す」という役割です。天井、床、壁がパネルヒーターになって熱を出しているわけですが、その熱を外に吹き飛ばすというイメージです。実際、その効果は相当に大きいのです。そしてこの効果も涼しい風を取り込んだときのほうが大きくなります。

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まとめると、まずは天井、床、壁の“仮想パネルヒーター”から出てくる熱をいかに抑えるか?そして次に、涼しい風をいかに室内に取り込むか?
この2つがうまくできればできるほど、高原の木陰に近づいていくというわけです。もちろんめちゃくちゃ近づくということにはなりませんが、エアコンをつけなくてもいい時間がどんどん増えていきます。

そしてきっと身体も楽になって、ひと夏を過ごせば「あぁ、エアコンに頼るんじゃなく、こんな住まいで夏を過ごすことが長い時間で見れば心地いいことなんだ」と実感するはずです。


 冬の心地いい住まい
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冬に心地いい空間・場所はどういうところか?
それはとても簡単で、身体に触れている空気の温度が18℃~22℃くらい、身体に面したものの温度(家の中であれば床・壁・天井の温度)もそれと同じくらいで、風が身体に当たっていない、というような空間・場所です。先に挙げた「秋晴れの風のない日の公園」「初春の日差しが当たっている部屋の中」はそれに近い状況になっています。実は「布団の中」はまさにそうした状況です。

エアコンやファンヒーターをつけることで「空気の温度が18℃~22℃くらい」という部屋は実現できますが、「床・壁・天井の温度も18℃~22℃くらい」「風が身体に当たらない」は実現できません。だからこうした暖房機器だけでは冬の心地良さは得られないのです。

では、この3つの条件を満たすような住まいをつくるにはどうすればいいか?
実は、それはとてもシンプルな話です。

まずは何よりも家の中にある熱をできるだけ外に逃がさないようにすることです。そうすることで、家の中の空気の温度は暖房しなくてもどんどん上がっていきます。しかも、床・壁・天井の温度も一緒に上がっていきます。(本当にそうなるので、とてもおもしろい!)
そうすると、ガンガン暖房をかけなくても、少しだけ暖房で熱を加えてやるだけで、「空気の温度が18℃~22℃くらい」「床・壁・天井の温度も18℃~22℃くらい」が実現されます。そして「少しだけの暖房=温風が少ない」ということなので「風が身体に当たらない」にかなり近づくことにもなるのです。

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こうした空間(住まい)は「ポカポカと心地いい」という表現がぴったりになります。自然な心地よさにかなり近いというわけですね。

さらに、これに加えて「晴れた日は日差しを家の中に取り込むということをすれば、完璧に近い「自然な心地よさ」を生み出すことになります。
ここで夏のパネルヒーターの話を思い出してください。夏には「ゲッ」と思ったこの話ですが、冬にはこれが「おぉ、素晴らしいじゃないか」と逆転します。

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日差しを窓ガラスからたくさん取り込むほど、床・壁・天井が長時間パネルヒーターとして働いてくれます。冬の日差しの強さもかなり大きいので(夏に比べれば少しは小さいですが)、十分な能力のパネルヒーターが得られるようになります。そうすれば、晴れた日の昼間はもちろんのこと、夜になってもかなりの時間まったく暖房をつける必要がない状況が生まれます。暖房をつけなければ「身体に当たる風はゼロ」ですから、さらに心地よさは向上するわけです。

さらに付け加えておけば、こうした“日差しを利用した、自然の床・壁・天井パネルヒーター”は、その全面がとても均一な温度になることも大きな特徴です。想像してみてください。風がなくて、空気も床も壁も天井も20℃くらいになっているような空間を。

こうした空間は、実は誰もがほとんど経験したことがないのです。だから想像してもらうしかないのですが、「最高にポカポカと心地よい」という表現に格上げできそうということはわかっていただけるんじゃないかと思います。


 春と秋の心地いい住まい
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あとは春と秋です。
この季節は、温度についてはおよそ快適な日が多いので、そのあたりのことは考えなくても大丈夫ですね。

だから「明るさ」と「風通し」のことを考えればOKです。ここで「風通し」は、夏のような涼しさを得るためのものではなく、部屋の空気を入れ替えるのが目的です。

でも、この2つの話はとっても簡単に終わってしまいます。とにかく、窓から日差しと風が十分に入るようにしておけばよいわけですから。昼間にLDKの電灯をつけないといけないような住まいは不快ですし、外には風が吹いているのに、窓を開けても部屋の空気は澱んだままの住まいも不快です。

カーテンを開ければ日差しが部屋に入ってきて明るく、窓を開ければ風が通るようにしておけば、春と秋はそれだけで十分に心地よい住まいになります。

ただ、どんな敷地条件でも本当にそれを実現させるためには、かなりの工夫が必要です。また、春と秋には(冬も)日差しがたくさん入るけど、夏にはできるだけ入らないようにしないといけないわけで、そのあたりにも工夫が必要になってきます。そのへんのお話は「エヌテックのパッシブデザインLinkIcon」のページを読んでください。


 ところで、パッシブデザインって何?
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ここまでほとんど「パッシブデザイン」という言葉に触れずに述べてきました。でも、もうおわかりだと思います。ここまでに述べてきたことをしっかりと考え、住まいを計画することのすべてが「パッシブデザイン」です。

つまり、パッシブデザインとは“自然の心地よさ=深い心地よさ”を生み出す設計思想であり、具体的な設計技術ということです。ようやく最近になって、そのことに気がつき始めた人(プロも住まい手も)が増えてきましたが、それは当然の流れだと思います。私たちも含め、実現したいのは本当の意味での「心地いい住まい」だからです。

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パッシブデザインにこだわる理由

その1.LinkIcon

  • パッシブデザインは、深い心地よさを生み出すものだから。

その2.LinkIcon

  • パッシブデザインは、人工的なエネルギーを浪費しなくて済むから。

その3.LinkIcon

  • パッシブデザインは、暮らしがおもしろくなるから。

その4.LinkIcon

  • パッシブデザインは、地域によって違うから。

エヌテックのパッシブデザイン

パッシブデザインの実例

パッシブデザインと省エネルギー

パッシブデザインでゼロエネ住宅